偏屈博士と小林君

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幼い少女の頃に戻ったみたいに

「ですからこの件は刑法第二百五十二条が適当と考え―――」


いつも思う。
この冷静沈着な法曹界のクイーンは、どうして父親の前でだけあんなに少女のような態度を取ってしまうのだろうか。







「お母さん!お疲れ様!」

「あら蘭。待っててくれたの?悪いわね」

「ううん!表にお父さんもいるよ」

「あの人も来てるの?」


ほら。
こういうところで少し嬉しそうな顔をする。


「どこか美味しいところに御飯食べに行こうって。大口の依頼が入ったから太っ腹なのよ。お母さんも誘えってお父さんが言ったのよ」

「ほんとかしらね?」

「ほんとだってばー!」


満更でもなさそうな顔をしてるくせに憎まれ口を叩く。
こういうところも、まるで思春期の少女を見ているようでなんだか微笑ましい。


「ほら、行こ?」

「あっ・・・ねえ待って。あの・・・化粧変じゃない?この口紅濃すぎないかしら」

「え?そんなことないと思うけど・・・」

「それに服も仕事着のままだし・・・」

「・・・お母さ〜ん?お父さんに褒めてもらいたいんでしょー」


にま、と笑って茶化すと、「そんなんじゃないわよ。高級なお店に行くんだからそれなりの格好をしていないと」などともっともぶって言うけれど、その頬は一目でわかるくらい赤くなっている。


「と、兎に角、少しくらい化粧直しさせてくれたっていいでしょう?折角だからネックレスくらいつけるから」

「仕方ないなあ」


逃げるようにトイレへと駆け込む母親を、蘭は心底嬉しそうに見送った。
恋をしている、その母親を。










幼い少女の頃に戻ったみたいに

(やっぱドレス姿のマダムは色っぺーなあ!)(・・・ご馳走さまでした。お先に)(お、お母さん!お父さん!!)(ダメだこりゃ)




コナンが一切喋っていない件
| 17:38 | 他CP | - | - |
そこにあるのは名もない感情
似ている、のだ。
それはそれは嫌になるほどに。


自分の娘が恋心を抱きながら待ち続けている相手が、彼女を見る眼差しと。
阿笠博士の親戚だと言ってうちに転がり込んできた居候の子供が、娘を見る眼差しとが。
腹立たしいことに、小さな頃からずっと見ていたあの生意気な探偵気取りの小僧と。


時折、とても優しい眼差しを娘に向けること。
娘が危ない時、父親よりも先に体を張って彼女を守ること。
何事かを考えている時の、あの鋭い瞳孔のことも。
小学生とは思えない犯人の追い詰め様も。


証拠は、ない。
ただ感じるのだ。
あれは間違いなく、将来的に自分から大事な物を攫って行くであろう彼なんだろうと。


(・・・これなら、前の状態の方がまだマシだったな)


嬉しそうに毎日彼の話をする娘は見ないで済むが、毎日泣きそうな顔で携帯を握っている娘を見るハメになった。
家はにぎやかになったが、あのいけ好かない目で娘を見るのを何度も見るようになった。
実に気に食わない。

ただ――――・・・。


(何時だと思ってんだ!)
(ご、ごめんなさぁーい!)
(おいコナン、映画でもつれてってやろうか)
(ほんとに!?)
(現場を荒らすなって言ってんだろうが!!)
(いってぇ―――!!)


あれだけ娘を想っているであろう男が、無闇に彼女を心配させるとも思わなかった。
彼の思うところは小五郎の知る所ではないけれど。


もう少しだけなら、この芝居を続けてやってもいいと思った。










そこにあるのは名もない感情

(そして彼は、また知らないふりをする)


補足:人生経験の浅い新一よりも周りがよく見えてたりする格好イイおじさんを書きたかった。コナンのこと息子みたいに思ってたらいいなと思った。後悔はしていない。
| 19:37 | CP無し | - | - |
何でも推理できる訳じゃない
言葉にしてくれないと、わからない?
態度で示してるのに、わからない?


相手の気持ちが、直接伝わればいいのに。







「アホッ!」


開口一番、そう怒鳴って行ってしまった。ほんの二ヶ月前に、幼馴染から恋人へ昇格した愛しい恋人。
こういう時はどうするか、理由の解明が先決だ。

ひとつ。彼女は何故怒ったのか?

朝、いつもの場所で待ち合わせて一緒に学校へと向かった。その途中で彼女は怒り出した。なんとか宥めて理由を聞き出そうとすると、先ほどの暴言へと戻ってくる。


「なんやっちゅーねん」


歯にノリがついてることを指摘したのが悪かったのか、それとも寝癖が某ホラー映画に出てくる死体に似てると笑ったのが悪かったのか。それとも―――。
こうして、西の名探偵こと服部平次が悩んでいる間にも、学校の始業開始のベルは無情にも鳴ってしまったのだった。







「なあ・・・アンタらの喧嘩はいっつものことやけどなあ、アタシら巻き込むのやめてくれる?服部君の機嫌悪ぅてかなわんわ」


お昼休み。
ついにクラスメイトのひとりが和葉に詰め寄って何とか彼の機嫌を取ってもらうべく、行動にでた。


「あんなデリカシーの欠片もないアホなんて知らん!」

「・・・どーせまた歯ァにノリついとるとか寝癖がホラー映画みたいやとかそんな類やろ」


的を射られてぐっ、と和葉が口をつぐんだのも一瞬、


「ちゃ、ちゃうもん!他にもあるんや今回は!」


と、反論する。しかしそんなことなどどうでも良い愛すべきクラスメイト様はふぅぅ、とため息をついただけだった。


「あんな?そういうのは本人同士でよおおおおっく話し合うたらエエんや。他人の口出しでどうこうなる問題でもないしな。アタシらの願いはただひとつ、平和に学校生活を送りたいだけやねん!アンタんとこの旦那夫婦喧嘩した後不機嫌丸出しで登校してくるからそれができへんの!わかる!?」


予想以上の彼女の切なる願いは、和葉たちのクラス一同の願いでもあった。友よ、勇気ある代弁を感謝する!といったような空気さえ流れているのだから。


「せやからはよデリカシーの無いことのひとつやふたつ許したり!ほら!」

「うわっ」


どん!と背中を押され、和葉は無理矢理平次の前に押し出される。
困ったように平次を見るものの、彼はムスっとした表情のままじと目で彼女を見ている。


「あ・・・あんな、平次・・・・・・その、今朝のことやねんけど・・・」

「おう、言うてみい。一応言うとくけどな、俺はあれから必死で考えてそれでもわからんかったんやからな。それなりの理由じゃないとタダじゃ済まさへんぞボケ」

「なっ・・・んやのその態度!!めっちゃ腹立つわ!大体なア、平次が悪いんやで!アタシは・・・」

「アタシはなんや?」

「あの・・・そやから・・・・・・手ぇを・・・」

「手ぇ?」

「・・・そうや!手ぇ繫ごと思ってずっと握るタイミング見てたのに、アンタ身振り手振りで話するし片方の手はカバン持っとるしで!」


おかげでアタシ手ぇ伸ばしっぱなしにしててマヌケみたいやってんから!と、顔を赤くして絶叫する彼女は。言い切った後に、今がどんな状況か思い出したようで、赤い顔を更に真っ赤にして暫く固まっていた。


「・・・そんだけか?」

「そ、そんだけて・・・」


少なくとも、彼女にとっては大問題だったのに、それだけで済まされると流石にやりきれないものがある。でもその思いも、平次が盛大なため息をつきながら机に頭を沈めたことによって途切れさせられる。


「ビビったわ・・・。俺ほんまこのまま別れる言われるかと思うたわ」

「・・・そんなことある訳ないやん。アホ」

「アホとはなんや!こっちは本気で考えててんぞ!」


焦ったように言い返す彼の表情が嬉しくて。
和葉はうれしそうに笑った。


・・・因みに、教室にいた生徒はイチャつき警報が発令されたので廊下へと追いやられていたのだった。













何でも推理できる訳じゃない

(特に君に関しては!)


似非関西弁スイマセン!





| 00:20 | 平和 | - | - |
僕だけを見てね
子供だから仕方ないよね、なんて言ってたら

優しい小悪魔は、その瞬間を見逃さない。








「蘭ねーちゃん!」

「あら、コナン君」

「今帰り?今日は早かったんだね」

「うん。部活休みになっちゃったの。だから今日は早く帰って、ご馳走作ろうかなって思って」


そういうと、少年は子供のような笑顔を見せて「やった!」と喜ぶ。
いつもいつも大人のような発言を垣間見せる彼のこんな表情を見て、少しほっとしたりもするのだ。


「まだ材料買ってないから今からスーパー行くんだけど、コナン君どうする?」

「今サッカー終わって帰るとこだったから、僕も荷物持つの付き合うよ」

「ありがとう〜。助かるわ」


2人並んで歩き出すと、必然的に今日のメニューの話題になる。
時刻は五時半。サッカー帰りの少年のお腹は、ちょうど鳴り出す頃だった。


「なにがいいかなー。ご馳走って言っても色々あるのよねえ・・・コナン君なにがいい?」

「・・・うーん。僕カレーがいいな。今日帰りにどこかの家がカレー作ってたらしくて、匂い嗅いだら食べたくなっちゃって」

「カレーかぁ・・・。うん、いいね。カレーにしよう!私も食べたくなっちゃった」


決まりだね、と笑う二人は早速スーパーへと入っていく。
必要なものを物色していると、ふと思い出したようにコナンが口を開いた。


「そういえば、僕ノート使い切っちゃって。買ってもいい?蘭ねーちゃん」

「あれ?この前買ったと思ったけど・・・」


少年がノートを買って欲しいとねだったのは、つい二週間ほど前ではなかったかと思い返す。


「うん。何か色々メモしたりしてたらなくなっちゃって・・・」

「・・・また学校帰りに遭遇した事件のこととかじゃないでしょうね?」


そう言った途端に、ギクリと少年が冷や汗を描いたのを蘭は見逃さなかった。


「やっぱりそうなのね!?一昨日帰りが遅いと思ったのはやっぱり気のせいじゃなかったんだわ!もう!危ないことはしないって約束したじゃない!」

「あ、そ、そうなんだけど、で、でもね、あの・・・」


事件とあればそれが殺人だろうと人探しだろうと首を突っ込んでしまう。まるでどこかの高校生探偵のような少年に、蘭はため息をついた。


「あ、危なくはなかったんだよ?あの・・・おじいさんが孫の姿が見えないからって。その子を探し終えたらお茶に招待されて、そのお家にちょっと面白い仕掛けがあったから・・・」


必死で言い訳をする彼なら解けたのであろうその仕掛け。
それが、その人にどれほど感謝されたのか分からないでもない。


「だから・・・・・・おねがい」


ダメ?と両手を合わせられると、彼女はもう完敗だった。何故かこの顔には弱いのだ。


「仕方ないなあ・・・。でもほんとに無茶したりしたらダメだよ?」

「はーいっ」


うれしそうに文房具のところに駆け出す少年の後姿を、彼女はやれやれといった風に見送った。








「あれ、毛利」

「あ」


よっ!と声をかけてきたのは、同じクラスの男子。あまり話したことはないけれど、新一経由でなら口を交えたこともあったように思う。


「買い物かー?スゲーな」

「そんなことないよ。・・・お家この辺なの?」

「そそ。そんで俺は買い食いの途中!」

「ダメなんだよー?」

「堅いこと言うなって」


ケタケタと笑う彼と、クスクスと微笑む彼女。学校帰りに偶然出会ったカップルに、見えなくもない。


「毛利今から時間ある?これから3人合流してカラオケでも行こうって話になってんだけど、一緒にどう?」

「あ・・・でも荷物があるから」

「いいんじゃね?何か面白いじゃんそういうのも」


どこと無く受け入れ態勢の彼の誘いを断るのも気が引けたが、今はノートを物色しているであろう少年も気にかかっている。どうしようか困っていると、自動ドアの付近から少しにぎやかな声が聞こえてきた。


「あー!いたいた。お前入り口のとこで待ってろって言っただろー!?」

「ゲ・・・。悪い!忘れてた!」

「謝って許されるかこの野朗!」

「あれ?毛利じゃん。・・・何お前、毛利ナンパしてたの?工藤が怖いぞー」

「そんなんじゃないってっ」


クラスメイトの三人は、すぐに蘭の存在に気付いてふざけて最初の男をぐりぐりといじめたが、彼は照れたように頬を染めて反発していた。それを蘭は、少し羨ましそうに眺める。


「カラオケ毛利も来るの?」

「あ、うーん・・・・・・」

「おいでおいでー」


「蘭姉ちゃん!」


どこか切羽詰ったような、悲しいような。
そんな色が混じった声で呼ばれて、思わず蘭が振り返ると、コナンが彼女の手を取ってぱっと後ろに隠れた。


「こ、コナン君?」


人見知りするようなタイプではない彼が、珍しい。


「・・・隠し子?」

「ち、ちがうよっ!うちで預かってる子なの」

「そのがきんちょ連れてきてもいいよ?」

「あ、ホント?」


一瞬だけうれしそうな顔をしたのを、少年は見逃さなかった。少し考えた後に、くん、と彼女の手を引く。


「蘭ねーちゃん。僕お腹空いたよ。早く帰ろ?」

「あっ、そっか、ごめんね」

「あっ――も、毛利!」


これで話は打ち切られた、という時に。
彼は思わず蘭の手を取ってしまった。
彼女は驚いたように青年を見つめたけれど、彼は慌てふためくばかりで。


「あ、あ、あの・・・っ」

「・・・・・・その、毛利。悪いけど、一時間でいいんだ。カラオケ付き合ってくんねーかな?」


やっぱりな、とコナンは思う。
彼は偶然ここで蘭に会ったわけでもなんでもない。待ち伏せていたのだ。ここに蘭が来るのを。こういう直感ははずしたことがないので少しイヤになるけれど。
純情な青年には可愛そうだけれど――――・・・コナンは、握っていた彼女の手を更に強く握って、悲しそうな顔をした。


「行っちゃヤダ」


蘭の性格を考えつくしているから。
彼には悪いが、こちらはこちらで、自分が子供であるということをフル活用させてもらうしことにした。










「ただいまー」

「あれ?お父さんいないみたいだね」

「おじさんなら今日は夕方から飲み会だって出て行ったよ」

「またー!?」


もう!と怒る彼女を尻目に、コナンは持っていた袋を机の上にドサ、と置いた。


「じゃ、すぐ作っちゃうね」

「うん!」


嬉しそうに笑う少年の顔を、思わずじっと見つめてしまう。


「・・・どしたの?蘭ねーちゃん」

「あっ・・・ううん!なんかね、さっきのことなんだけど・・・コナン君があんなこと言うなんて意外だなーって。ほら、コナン君妙に大人っぽいところがあるから」


なんか安心しちゃった、という蘭に、ふーん?とコナンは首を傾げる。


「よしっ!じゃ、頑張って作っちゃうね!」

「うん。・・・あ、蘭ねーちゃん」

「ん?」


ぎゅ、とエプロンを結んで野菜を握った彼女に。



「ずっと一緒だよ」



レンズ越しのその眼が。

まるで逃がさないよ、と言っているようで――――。










僕だけを見てね

(小悪魔は、そろりと君の心を奪っていくよ)


配布源*確かに恋だった


| 22:38 | コ蘭 | - | - |
お礼なんていいですよ
人を弄ぶような態度も(誰にも本気を見せないようなところも)、気障なことしか言わないその口も(その口が紡ぐ言葉が誰かを支配していくのも)、似合わない白い服も(闇夜には白すぎたその服も)、誰にでも優しいふりをするのも(私以外の誰かにそんな態度をとるのも)、


ぜんぶ、嫌いだ。







来なきゃよかった、と青子は思った。
夜に聳え立つ学校ほど不気味なものはない。
宿題を忘れてきた自分のまぬけさを恨みながら、震える手を押さえつけて、音を立てないように鍵を開けておいた窓から中に入り込む。


「真っ暗・・・」


当然といえば当然なのだが。
いつもならこういう時は快斗を連れてくるのだが、彼は今日は用事があるらしく断られてしまった。―――因みに、その際に「どうせ怖くて動けなくなるんだろうから行くなよ」と釘を刺されていたのだが、彼の言うとおりになるのは悔しかったのでこうしてきてしまったのだが。


(快斗が悪いのよ!)


宿題を忘れたのは自分だというのに、責任を彼になすりつけ、青子はパチ、と持ってきた懐中電灯のスイッチを入れた。
予想以上の不気味さに、暫し言葉を失うものの。青子はしっかりと懐中電灯を握り締めて一歩を踏み出した。
ぺたん、と足音が響く。


(・・・なんで一緒に来てくれなかったんだろう)


いつもなら、ぶつぶつ言いながらもこういう所に青子をひとりで来させるなんてこと、彼はしなかった。


(青子があんまりワガママだから、嫌になっちゃったのかな・・・)


少し気分が落ちかけたとき、ふと足元を照らす光に何かが映った。
ビクッと青子の肩が跳ね上がるのと、光がそれの全体を照らすのとはほぼ同時。

とうとう青子は、腰がぬけて座り込んでしまった。






「なに、して、るの・・・・・・」

「少々偵察に」


ふ、と笑う彼はいつでも不遜な笑みを称えている。青子はこんなヤツに一瞬でも驚いてしまった自分を恨めしく思う。天井から、逆さまに(こうもりのように!)ぶら下がっている真っ白な怪盗をにらみつけた。


「そんな怖い顔をすると可愛い顔が台無しですよ」

「大きなお世話よ!」

「相変わらずつれないお人だ」

「当たり前でしょ!青子はアンタなんか大っ嫌いなんだから!!」


やっとのことで立ち上がると、彼が転がった懐中電灯を差し出しているのをばしっと奪い取って歩き出す。


「なんでついてくるのよ!」

「意中の人は捕まえたいものですよ」

「青子は大嫌いだって言ってるでしょ!」

「私は好きです」


ウソかホントかくらい、見抜ける目はもっているつもりなのに。
彼の言葉はいつも分からない。いつも彼女を困らせる。そして彼は、いつも決まってそれを楽しむかのように目を細めるのだ。


「だいた―――・・・」


い、と。
そう紡ごうとする青子の口を、真っ白な手袋が塞いで、体ごと引き寄せられる。
なにするのよ!と睨むと、もう片方の指を唇に押し当てて、しー、とジェスチャーする。
二秒後、一人の警備員が先ほどまで青子がいた場所を照らしてキョロキョロとあたりを見回し、何もないことを確認すると渡り廊下を戻っていった。


「・・・もういいでしょ」

「おっと。失礼」


素早く体を離して、青子は先ほどまでより少しだけ急いで階段を上る。
・・・赤い顔を、見られないように。
そしてまた、怪盗は何食わぬ顔で彼女の後ろを一定の距離で歩いていくのだった。

そして、階段の頂上に立つ彼女がぴたりと止まったので、彼もつられて止まる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ぽそ、と。
彼女が何かを呟いたのは聞こえたのだが、よく聞こえない。


「何か仰りましたか?」

「だからっ」


思わず振り向いてしまったような彼女の顔は薄暗くてよく分からなかったけれど。


「ありがとうって言ったのよ!」


きょとんとした表情が、青子を見つめる。
それに耐え切れなかった彼女はぷいと方向を変えてまた自分の教室へと向かった。

青子には見えなかった。

怪盗がその瞬間に、子供のように嬉しそうな顔をしたのを。







「あったぁ」


ほ、っと胸をなでおろして、青子はプリントを折りたたんだ。


「よかったですね」

「うん!これで宿題やれる・・・」


思わず幼馴染に喋るような口調で彼に話しかけてしまって、青子は慌てて口調を変えた。


「べ、別にキッドには関係ないでしょ?学校で何する気かしらないけど、変なことしたらお父さんに言いつけるからね!」

「今宵の私はあなたのボディガードを勤めさせてもらうために参上しただけですよ。いつものあなたのナイトは来れないようでしたからね」

「・・・・・・なんでそのこと知ってるの?」

「・・・さあ、何故でしょう」


に、と笑う彼は窓を開けて。
風にはためく白いマントが翻り、彼は足をかけた。


「ま、待って!!」

「おや。引き止めてくださるのですか?」


悪戯っぽく笑う彼の言うとおりなのを肯定するのは悔しいけれど。


「――――ありがとう。癪だけど、青子怖くなかったよ」


そういって、彼女は微笑んだ。
その表情が柔らかくて、彼は好きだった。


「・・・今日も終わりかけているというのに最後の最後にこんなイイモノを見れるのだから、私は幸せ者ですね」


彼は、窓枠へ立った。


「それではお嬢様。また、貴方のその微笑を貰い受けるべく、私は参上するでしょう―――」


彼は、夜へと身を投げた。


慌てて青子が窓へ駆け寄ると、白いハングライダーが弧を描いて、月へと走るところで。



「・・・ほんと、気障でイヤなヤツ」



ぽつりと呟いた彼女の声は、夜が攫って行った。










お礼なんていいですよ

(一瞬でも貴方の隣が許されるのなら、)



配布源*確かに恋だった


| 16:53 | キ青 | - | - |
誰にでもスキだらけ
まさか・・・いやでも。
恋する男の第六感。

意外と当たったりも、する。







「・・・なに?人の顔じろじろと」

「あ、いや・・・」


哀はお返しとばかりに彼をじっと見た。何かを見透かそうとするかのように。


「なあ、オメーさ、蘭のこと・・・好きなんじゃねーか?」

「はぁ?」


突然すぎる質問に、彼女はこれだから探偵という人種はというような目でこちらを見ている。


「ワリ。気にすんな」

「・・・・・・・・・・・・嫌いじゃないことは確かね」

「・・・ウソ?」

「あら。そんなに驚くこと?貴方は気付いてないかもしれないけど、彼女とは私この家で何度か一緒にお茶を飲んだりしているもの。嫌いな人とはそんなことしないでしょ」

「マジで・・?」


そんなこと、一言も聞いていないのだが。
しかし時々うれしそうに帰ってくる蘭の様子を見れば何となく想像はつく。


「愛に国境も人種も・・・性別も関係ないんじゃないかしら?」


ふ、と笑う彼女は。
どこまで本気なのか、どこまで冗談なのか。それとも、全て本気なのか、よく分からない表情をしている。


「お、オイオイオイ」

「あなたとは良い恋敵になれそうね」

「ちょっと待てっ」


その真意を問いただそうとした時、タイミングよくインターフォンが鳴る。


「あら、来たみたいね」

「来たって・・・まさか」

「今日も一緒にお茶を飲む予定だったのよ」


あなたも一緒に飲む?と聞いてくる彼女は、どこか挑戦的な気がしないでもない。
小さくなった体でドアノブを回すと、そこには学校帰りであろう蘭のうれしそうな姿があった。


「哀ちゃんこんにちは!ちょっと遅れちゃったね」

「いらっしゃい。別に待ってないから大丈夫」


上がって、と促す彼女の動作はなれたものだ。お邪魔しまーす、と上がる蘭が、コナンの存在に漸く気付く。


「あれ?コナン君じゃない。今日は博士の家にいたんだね」

「あ、う、うん・・・。蘭姉ちゃん、よくここに来るの・・・?」

「うん。週二回くらいかな?哀ちゃん紅茶淹れるの上手だから時々ご馳走になってるの」

「へ、へー・・・」


なんとも言葉にし難い気持ちで哀の方を見ると、彼女は勝ち誇ったかのような笑みを静かに称えていた。


(にゃろー)


あながち冗談ではない先ほどの彼女の言葉を思い出し、彼は出された紅茶をうれしそうに飲む幼馴染の姿をフクザツそうに眺めるのだった。












誰にでもスキだらけ

(俺の心臓を試してるとしか思えねえ!)



配布源*確かに恋だった
| 15:58 | 他CP | - | - |
| 1/1 |